「過労死するまで働け」と言われなくとも、労働者は「自分が過労死するとは思わずに、過労死するまで」働き続けてしまう。過労死する人のほとんどがその直前までストレスを感じておらず、死に至るほど「疲れている」という自覚症状がないまま、過酷な状況に慣れてしまっているケースが多いということをほとんどの人はわかっていないそうです。
「自分が過労死するとは思わずに、過労死するまで働き続けてしまう」人間の謎は、ネズミを使った実験により解明されているそうです。
“ネズミの過労死実験”は、「疲労研究班」(20以上の大学や機関の研究者で構成された文部科学省主導の研究会。平成11〜16年にわたって様々な研究を行っている)が行った実験で明らかになった。この実験では、ネズミを10日間、毎日水槽で30分間泳がせることで、「働き続けるメカニズム」を検討したのだ。ちなみに、ネズミは泳げる動物なので、おぼれることなく必死で30分間泳ぎ続けることが可能だそうだ。
強制的に水槽遊泳を強いられたネズミは、どうなったのか?
1日目。仕事=水槽で30分泳ぎ続けると、その後、ネズミは疲れ果てた様子で、ぐったり寝てしまい1時 間ほど起きてこなかった。
そして2日目。この日も初日同様、仕事のあとは1時間程度、寝入ってしまった。
ところが3日目、ネズミの行動に変化が起きる。仕事後は初日、2日目と同じように寝てしまうのだが、40分程度で起き上がり、1週間たつと、寝るには寝るが睡眠時間はわずか5分と急激に減少したのだ。
さらに10日目に、劇的な変化が起きた。
30分泳ぎ続けるという過酷な“労働”を終えたネズミは、寝ることもなく平然と動き始めたのである。10日間過重労働を経験することで、過酷な労働に耐えられる“スーパーネズミ”が誕生してしまったのである。
動物の前頭葉の下の部分には、疲れを感知すると脳幹に「疲れているので、休んでください」という信号を送る「疲れの見張り番」のようなセンサーがある。ここから指示が出されると、指示を受けた脳幹は神経細胞を通してセロトニンを分泌する。セロトニンが分泌されると、脳は休ませるために活動を抑える。その結果、元気な状態を取り戻すのである。
(日経ビジネスの記事から)
そういえば、テレビで「寝だめ」はできるか、についての番組がありました。
それまでそれはできない、と認識していましたが、それは「寝すぎる」とだるくなる症状があるためのことらしく、実は疲労度を計るある指数では、たくさん寝るとその疲労度は明らかに下がるそうです。
本当は疲れているのに、疲れを感じない、貯めているような状態というのがミソ。寝すぎる、いえ、充分寝るとそのストッパーがはずれ、疲れが表に出るからぐっすり寝てもだるい感じがするそうです。でも、実は疲労は解消しているのです。
私の経験でも。美容室に行くとシャンプーの後に肩や腕をマッサージしてくれるのですが、ずいぶんコッテイマスね、必ずと言われます。日常は肩のコリを感じていません。マッサージしていただいている時に、その痛さや肩のコリを感じて、疲れていることを自覚します。
常に、とはいきませんが、ストッパーを外すことを意識するようになりました。
その結果、次のようなことが明らかになっています。
・ | 男性では有配偶者のほうが、無配偶者に比べ若干高い |
・ | 女性では無配偶者のほうが、有配偶者に比べ著しく高い |
・ | 教育水準別では、大学院修了者が長時間労働者全体の49.1% |
・ | 企業の業績が1年前にくらべ「かなり悪くなった」と回答した労働者と、「かなり良くなった」と回答した労働者に多く、U字型を示した(回答は「かなり悪くなった」〜「かなり良くなった」の5件法) |
今のご時世、業績が悪くても地獄、良くても地獄、ほどほどの状態でいるのが、いちばんいい、ということなのか。いずれにしても、「30歳以上の結婚している男性、あるいは未婚女性で、高学歴であるほど長時間労働をしている」可能性が高いと言えます。
総務省統計局が実施している「労働力調査」によれば、週労働時間が60時間を超える労働者の割合は10.0%(平成20年度)とやや減少傾向にあります(平成16年度は12.2%)。しかし、年齢別に見ると30歳代男性では20.0%にも上ることが示されており、長時間労働を強いられている年齢と、そうでない年齢がある実態も浮き彫りになっています。